癖っ毛侍

それでも、天然パーマで生きていく。

電車の中の悪夢





こんばんは、ダイキベイダーです。



前のブログでは僕がいかにイキった高校生であったかを書きましたが、今回もそれにまつわるエピソードを書こうかなと思います。



前回更新ブログ
男は格好つけの格好悪い生き物です - 癖っ毛侍




高校時代の僕と言えば、天然パーマに今よりも更に過剰なコンプレックスを抱いており、休み時間には整髪を怠らないナルシスト野郎でした。


ヘアセットも今よりもずっと下手くそだったので、癖っ毛が常に本領発揮しており、気になって気になって仕方がありませんでした。


元来、スポーツが好きな人間なのですが、汗かいて髪の毛クルクルになりたくないという理由から2日で部活を辞め帰宅部となったほどでした。


今になってみれば帰宅部になったことで色々と楽しい時間を送ることもできて特に後悔もないのですが、毎年甲子園や高校サッカー選手権を見ているとスポーツにかける青春も楽しそうだなぁと少しだけ天然パーマを恨みます。




いや、本当はもうこんな髪の毛むしり取って捨ててやろうかなという強い邪念に囚われます。



そんな僕だったので自分が他人からどう見えているのかが気になって仕方ないのです。


変な髪型していないか
変な顔をしていないか
変な格好していないか
変な匂いしていないか


など、思春期特有と言えばその通りなのですが、自分で振り返ってもかなり強度のナルシシズムであったと思います。


あれ?よく見たらそもそも格好良くないぞ?と気付いたのはそれから随分経ってからでした。


そんな僕なので、学校帰りの電車の中でも両手を学ランのポケットに突っ込んでイヤホンで音楽を聴くことを徹底し、それこそが電車の中で一番格好良いポーズであると疑いませんでした。



聴いていた音楽が尾崎豊であったことも、思春期特有の痛さを助長してますね。


いや尾崎豊大好きですけどね。今でもよく聴きます。




その日も、ポケットに手を突っ込みながら、流れ行く景色を細い目で見つめる僕。


その表情はまるで、遠い場所に最愛の恋人を残してきた旅人のようでした。


もちろん、生粋のチェリーボーイであったことは言うまでもありません。



イヤホンから流れる尾崎豊の歌詞は、思春期の僕の心を捕らえて離しません。



尾崎のその歌詞に、僕は強く同調するのです。


いつになればこの支配から卒業できるのか。


僕が僕であるために、勝ち続けなきゃならない。


(いつかチェリーを捧げるどこかの誰かに)I LOVE YOU...



既に僕の左足はリズムに合わせて小さくビートを刻んでいます。



もっともっと音楽の世界に飛び込んでやろうとそっと目を瞑った時でした。電車が急ブレーキをかけたのは。



ポケットに手を突っ込み、どこか哀しい表情で目を瞑りながら宙を舞う僕。


ポケットから手を出して受け身をとろうとしたのですが、両手がポケットに引っかかるというプチミラクルにより肩から地面に叩きつけられる僕。



慌てて目を開けると哀れな僕を見つめる女子高生。


そしてそのまま1回転半して仰向けになる僕。



後にも先にも電車の天井をまじまじと見つめたのはこの時くらいです。






やばいやばいやばいやばいと自分のダサさ具合に焦りまくったのですが、この格好悪い状況をなんとか打破しようと格好つけるのをやめないことに決定。


やれやれというようにフッと笑い、立ち上がります。



再び窓の外を見て、先ほどと同じように遠い目をして景色を見つめます。



と言うか、車内に顔を向けるのが恥ずかしく、そっぽを向くので精一杯です。


最寄駅に着き、溢れ出てきそうな涙を堪えながら自転車で全力疾走をして帰りました。



こんなことがありながらも、できる限り格好をつけ続けた高校時代。


男たるもの女にモテてナンボじゃい、と日々奮起しながら卒業までチェリーを守り抜きました。


そして卒業した今でも電車に乗るときは吊革を強く握って尾崎豊を聴いています。