癖っ毛侍

それでも、天然パーマで生きていく。

墓参りの珍事


僕は地方の団地で育ったのですが、時々地元に帰ると、僕がそこで暮らしていた時よりも団地の平均年齢がぐっと上がっているんですよね。


当たり前と言えば当たり前なのですが、僕や同じ団地に住む小中学校の同級生達が団地を走り回っていたころとは全然違って、公園に子供はおらず、道行く人もほとんどが自分の親かそれ以上の世代の人になっています。


そりゃもう自分達が団地を我、この街を守る騎士なりと言わんばかりのドヤ顔で歩いていたのが15〜20年前ですからそうなるのも当然です。



よく登って遊んでいた大きな木も、秘密基地にしていた空き地も、誰の手も入らずに荒れ果てています。





何より街の高齢化を感じるのは、小学校の裏の下水道に定期的落ちていたエロ本が見当たらないことでしょうか。


本当に寂しくなったものです。


ただ、この間帰省した時に団地で唯一のコンビニに立ち寄って確認したところ、きちんとコンドームが売られていたのには少し救われました。


あなたとコンビにというキャッチコピーを痛感した次第です。



さて、僕のような30手前の男がそのような田舎に帰省するタイミングと言えばゴールデンウィーク、お盆、お正月になるのですが、その度になるべくお墓参りには行くようにしています。



他界した祖父には特に可愛がられていたこともあり、なるべく顔を出して近況を伝えるようにしているんです。


今年のお盆も同じように祖父の墓参りに行ってきたのですが、今回は私だけではなく従兄弟とその子供、叔父などと行って来ました。



祖父のお墓は手入れされていない雑木林に囲まれていて、夏場には無数の虫が飛び交っています。


線香を上げて手を合わせていても耳元で虫の羽音が聞こえてくるのですが、今回は3歳になる従兄弟の子供の声が聞こえ、久しぶりに賑やかなお墓参りになりました。


「ここにおじいちゃんが眠っているんだよ〜」などと叔父が子供に言うわけですが、今ひとつ理解できていない顔でウンウンと頷く姿が可愛らしくとてもホッコリした気分になっていました。



すると祖父の墓の裏側から一匹のミツバチが飛んできて墓の周りをクルクルと回り始めたんです。


子供は「ハチだぁ」と指をさしてケラケラ笑っていました。


僕は「近づいたら危ないよ。こっちにおいで」と子供に手招きしたのですが、叔父はそのミツバチを見ながら「おじいちゃんがハチになって会いに来てくれたね〜」と子供に言うのです。



中々気の利いたセリフを言うじゃないかおじさん。僕が小さい頃は「お前も将来ハゲてしまえ」と自分のハゲ頭を僕の顔に擦り付けてきていたのに。

年を重ねて叔父も粋なことを言えるようになったようです。



「えぇ!おじいちゃんハチになったの!?」と驚く子供。



ニッコリと頷く僕。



ぶんぶんと元気良く飛び回るミツバチ。



「さぁ帰ろうか」と立ち上がろうとした瞬間、ミツバチに手を刺される叔父。



「痛い痛い」とミツバチを振り払う叔父。



「やられた」と恨めしそうに手から落ちたミツバチを睨む叔父。



呆気に取られる子供と僕。



家に帰ってこのエピソードを伝えると誰よりも笑っていたのは祖母でした。



皆さんもハチには気を付けてくださいね。